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2007年2月 5日 (月)

トンデモない米国医療システム(続き)

渡辺千賀氏のブログ・エントリ「On Off and Beyond: トンデモない米国医療システムからイノベーションが生まれるのか」 コメント欄で教えていただいた資料で、米国での医療事故訴訟が医療医療に与える影響について分析したものです。

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3. Health Care Costs are Increased

The medical litigation system attacks the wallet of every American. Money spent on malpractice premiums (and the litigation costs that largely determine those premiums) raises health care costs. A GAO study in 1994 estimated that malpractice premiums comprise 1% of total health care expenditures; given current spending, this amounts to $14 billion dollars.60

The litigation system also imposes large indirect costs on the health care system. Defensive medicine that is caused by unlimited and unpredictable liability awards not only increases patients' risk but it also adds costs. A leading study estimates that reasonable limits on non-economic damages, such as California has had in effect for 25 years, can reduce health care costs by 5-9% without "substantial effects on mortality or medical complications."61 With national health care expenditures currently estimated to be $1.4 trillion, if this reform were adopted nationally, it would save $70-126 billion in health care costs per year.
...

"Addressing the New Health Care Crisis: Reforming the Medical Litigation System to Improve the Quality of Health Care",U.S. Department of Health and Human Services,Office of the Assistant Secretary for Planning and Evaluation,March 3, 2003

これは「市場原理が医療を亡ぼす-アメリカの失敗」(李 啓充,医学書院,2004)の以下の記述と一致しますね(p.168)。

ディフェンシブ・メディシンによる医療費の「無駄づかい」

ディフェンシブ・メディシンによる「無駄な」医療がどれだけ医療費を押し上げているかについてもいくつかの研究があるが、医療過誤の賠償金に上限を設けるなどの法的対策を講じていない州では、そのような法的措置を講じている州と比較して、医療費総額の五-一〇%が余計にディフェンシブ・メディシンに消費されているのではないかと推計されている。しかし、医療過誤危機に対する法的対策を講じている州でディフェンシブ・メディシンがゼロになるなるということはありえず、ディフェンシブ・メディシンによる医療費の「無駄づかい」は想像もできないほど巨額なものであると考えてよいだろう。

医療事故訴訟の間接的な影響、ディフェンシブ・メディシン(防衛医療)のコストを推計することは非常に難しいでしょうから、何ともいい難い、というところなのでしょうか。

”「改革」のための医療経済学”(兪 炳匡,メディカ出版,2006)にあります、「米国の総医療費上昇率(1940~90年)の要因を定量化・数値化したハーバード大学ニューハウス(Newhouse)教授の研究」に「筆者の仮定と計算を加えた」という推計を紹介したいと思います(p.121)。

米国における医療費上昇の5つの要因と寄与率(1940~90年)

  1. 人口の高齢化 4%
  2. 医療保険制度の普及 17%
  3. 国民所得の上昇 7%
  4. 医師供給数増加 ほぼゼロ
  5. 医療分野と他の産業分野との生産性上昇格差 12%
  6. その他の要因 60%

「その他の要因」が一番大きく、このうち最大の要因が「医療技術の進歩」ではないかと推測されています(p.124-126)。医療事故訴訟も「その他の要因」ですかね。

医療保険については、「医療保険制度の普及」とあるように、医療保険制度が普及した結果、医療需要が増加したことをもって寄与率を出しており、医療保険制度の効率性にまで踏み込んだものではないようです。これも「その他の要因」になるのかな。

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   病院を株式会社化して市場原理を医療に導入することが日本政府によって検討されるようになってしばらく経ちます。しかし、結論から言って、そのような政策が実行されている米国では、医療の質の向上には繋がらず、かえって医療の質を下げる結果となっております。さら... [続きを読む]

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