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2007年2月18日 (日)

我々は福島事件で逮捕された産婦人科医師の無罪を信じ支援します

2006年2月18日、福島県立大野病院の産婦人科医師が、業務上過失致死と医師法(異状死体の届け出義務)違反で逮捕され、現在公判中となっています。この事件は、医療関係者に非常な衝撃を与え、医療崩壊の象徴的な事件とされています。

本件は、癒着胎盤という、術前診断がきわめて難しく、治療の難度が最も高く、対応がきわめて困難な事例であります。
 起訴状によれば、本件における手術中、児娩出後に用手的に胎盤の剥離を試みて胎盤が子宮に癒着していることを術者である被告人が認識した時に、「(被告人には)直ちに胎盤の剥離を中止して子宮摘出術等に移行し、胎盤を子宮から剥離することに伴う大量出血による同女の生命の危険を未然に回避すべき業務上の注意義務があるのに、(被告人は)これを怠り、直ちに胎盤の剥離を中止して子宮摘出術等に移行せず、同日午後2時50分ころまでの間、クーパーを用いて漫然と胎盤の癒着部分を剥離した過失により、」とあり、被告人が直ちに胎盤の剥離を中止して子宮摘出術等に移行しなかったことと、胎盤の癒着部分の剥離に用いた手段に過失がある、とされています。
 癒着胎盤の予見のきわめて困難である本件において、癒着胎盤であることの診断は、胎盤を剥離せしめる操作をある程度進めた時点で初めて可能となるものであります。したがって、結果的には癒着胎盤であった本例において、胎盤を剥離せしめる操作を中止して子宮摘出術を行うべきか、胎盤の剥離除去を完遂せしめた後に子宮摘出術の要否を判断するのが適切かについては、“個々の症例の状況”に応じた現場での判断をする外なく、それはひとえに当該医師の裁量に属する事項であります。
 また、本件のような帝王切開例における胎盤の癒着部を剥離せしめる手段としては、用手的に行うことだけが適切ということはなく、クーパーをはじめ器械を用いることにも相当の必然性があり、この手技の選択も当該医師の状況に応じた裁量に委ねられなければ、治療手段としての手術は成立し得ません。

本件の転帰に関してはたいへん心を痛め、真摯に受け止めておりますが、外科的治療が施行された後に、結果の重大性のみに基づいて刑事責任が問われることになるのであれば、今後、外科系医療の場において必要な外科的治療を回避する動きを招来しかねないことを強く危惧するものであります。

県立大野病院事件に対する考え,社団法人 日本産科婦人科学会,平成18年5月17日

正直、非医療関係者たる私が、公判中の事件に対し、判断をするのは、なかなか辛いものがあります。しかしながら、病と死は自然現象であり、人として生きる限り避けられないものだと思います。患者および医療関係者は運命に抗しようと努力するものの、不幸な結果となることもあるだろうと思います。本件に関して、医師の方は最善を尽くされたと信じます。

なお、本エントリは、「新小児科医のつぶやき」ブログの「2007-02-07 2.18企画」 の趣旨に賛同するものです。

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元検事である著者は、個々の法令を遵守することに固執するのではなく、法令の背後にある社会的要請に応えることがコンプライアンスである、と述べています。また、複雑化している社会実態をみることなく、個別の法令をただ「遵守」しようとする姿勢に対し、疑問を呈しています。

著者の言に従えば、専門家が自らの良心に従い、誠実に職務を行なっても、逮捕されてしまうという世の中は、「法治国家」とはいえないでしょうね。

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