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2007年10月13日 (土)

階層下請け構造はなぜできるか

日本じゃ簡単にクビを切れないから、潰しのきかない技術者はできるだけ雇いたくない。そこのところはSIerに押しつける訳だ。重層的な下請け構造が何故あるかというと、SIerも簡単にはクビを切れないんでバッファを必要とするからで、6次とか7次になれば会社そのものが吹けば飛ぶ世界で、労働基準法なんか形骸化しているしね。

どっこいSIerは簡単になくならない - 雑種路線でいこう

企業内でのシステム開発というのは、毎年コンスタントに発生するわけではなく、結構大きく変動があるように思います。既システムの運用・保守・サポートであれば、コンスタントにありそうですけど。ある程度大きな開発案件というのは、5年に1回とかでしょうね。ですので、特に開発をおこなう技術者というのは、ユーザ企業本体で抱えるのは、難しいでしょう。

日本の製造業労働者の半数近くが、作業員数五〇名以下の工場で働いており、その多くは、夫婦共に日に一〇時間以上働いている低賃金零細工場である。このような零細工場は下請けとして、有名企業が流通経路にのせる製品・部品を作ったり完成品を組み立てるのであるが、低賃金労働力の供給源になり、不況時のショックの大部分を吸収する役目をしている。

カレル・ヴァン・ウォルフレン 著, 篠原 勝 訳, 「日本/権力構造の謎」(上), 早川書房, 1994, p.352

ソフトウエア開発者に限らず、日本企業の賃金テーブルの硬直性、労働力の流動性の低さが、こうした階層下請け構造を作っている、という指摘は、一理あるかと思います。

ただ、これが非常に深い階層構造になるのは、また別の理由があるように思いますね。つまり、多くの企業が人員を別々に抱える必要があるにしても、ジョイント・ベンチャーのごとく、対等なパートナーシップであっても良いはずでしょう。上下関係のある階層になるのはなぜなのでしょうか。

ひとつには、日本的な、責任の所在の曖昧さがあると思います。

以前に下請け構造内での”中間搾取”について、これを、”リスク引き当て金”であると、主張する方がいらっしゃいましたが。責任をどの業者がとるのか、あらかじめ明確に決まっていれば、中間業者のすべてがリスク引き当てを積む必要はなく、1社で十分のはずですよね。まあ、”引き当て金”といいつつも、どうせ売り上げ金に算入しているのでしょうから、欺瞞であろうと思いますけど。

しかし、責任の所在のあいまいさは、責任の分散を困難にしますから、1社に丸投げすることで、とにかく、責任を負う相手を決定する意味はあるのかな、と思います。それが、二次受け、三次受け、...n次受けへと繰り返されます。結局誰が責任を負うのかあいまいなまま ...(そして全員が”引き当て”を積むと)。そして、リスクが顕在化した際には、最も立場の弱いものが責任を負わされることになるわけですね。

もうひとつ、一般論ですみませんが、日本人というのは、協調性というものがあまりないのかな、と。

日本では、”協調性”という言葉は、有無をゆわせぬ同調、上に対する従順・服従を意味していることが多いように思うのですよね。対等なパートナーシップのようなものではなく。私達は、対等な関係を保ちつつ、集団で行動するというのを、非常に不得手としているのかもしれません。学校教育からして、軍隊式の上意下達の風がありますし。ですので、階層型の構造というのを、自然と好む傾向があるのかな、と思ったりします。

”信念”が社会・政治的状況によって変わり、”リアリティ”も操作できるものであるとすれば、多種多様な虚構を維持するのはかなり容易になる。このような虚構によってもたらされる国際的な言語表現上の混乱は、日本の評論家や官僚が”理解”という言葉を口にする時の特別な意味づけによって、さらに複雑になる。”相互理解”をさらに深めることが急務である、という表現が熱意をもって強調されることが多い。ところが、たとえば日本語で「わかってください」というのは、「私の言っていることが客観的に正しいかどうかはともかく、当方の言うことを受け入れてください」という意味の「ご理解ください」なのである。つまりそこには、どうしても容認してほしい、あるいは我慢してほしいという意味が込められている。したがって、このように使われる場合の日本語の”理解”は、同意するという意味になる。

カレル・ヴァン・ウォルフレン 著, 篠原 勝 訳, 「日本/権力構造の謎」(上), 早川書房, 1994, p.59

SI業界では、”外注”というのは差別用語なので、”パートナー”、”協力会社”と呼ぶべき、というようなことを主張する向きがありますよね。しかし、契約上、現実上、階層的な下請けになっているのであれば、あたかも対等であるかのように思わせる言葉というのは、”処遇は変わらないけど、責任だけは対等に負うように”という、ニュアンスを感じさせます。これも、”リアリティ”の操作ではないでしょうかね。

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