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2007年10月19日 (金)

トリクルダウン理論 - 歴史は繰り返すか

昨日のエントリ「格差の大きい国ほど成長率も高い?」 について。

”誰も「格差が大きければ大きいほど成長率が高い」などとは主張していない”との指摘をいただき、格差の大きい国ほど成長率も高い、というのは、元の記事の主張を少々拡大解釈しすぎたかな、と反省をいたしました。

経済成長によって、みんなが豊かになるならば、格差など問題にならない、という主張ととらえるべきでしたかね。まあ、今の日本では、その(高い)経済成長率をどうやって達成するかが大問題ではあるのでしょうけども。

さて、”トリクルダウン理論”なるものがあるそうです。

ヴィクトリア女王統治の19世紀後半。イギリスでは、繁栄する経済が、そのまま永遠につづくと信じられていた。そして多くの者は、成長を牽引する富者たちが一層富めば、その富のしずくが残りの層にもしたたり落ちるために、それでよいではないかという楽観的な考えを共有していた。これと同じ考え方は、後に1980年代のレーガノミックス、特にレーガノミックスにおける税制改革の思想的基盤となり、トリクルダウン理論(trickle-down theory)と名付けられるようになる。この理論が、レーガノミックスと関係があることから推測されるように、トリクルダウン理論は、サプライサイド経済学や新古典派経済学、さらに小さな政府論と強い親和性を持つ。

話を19世紀末イギリスに戻そう。今で言えばトリクルダウン理論に支配されていた楽観ムードの修正を迫った事実が起こった。(ロンドンで造船業を営んで一代で財を築いた)チャールズ・ブーズ(Booth イギリス式発音)、(ヨークでココア製造業2代目を継いでいた)シーボーム・ラウントリーによる<貧困の発見>である。ヘンリー・ハインドマンを領袖とする社会主義運動家たちが、ロンドン大衆の4分の1が深刻な窮乏に陥っていると告発したことに憤りを覚えたブーズは、一面識もなかったハインドマンを訪れ、論争のすえ、彼らの方法の不適切と事実の誇張を私費を投じて論証すると言明して、以後17年にわたるロンドン・サーヴェイに着手する。結果は、ハインドマンたちの訴え以上の惨状を発見することになる。

権丈 善一 著, 「医療年金問題の考え方 - 再分配政策の政治経済学Ⅲ -」, 慶応義塾大学出版会, 2006, p.16

私費を投じて大規模なサーヴェイを実施する、というのは、いかにも実証を重んじるイギリス人らしいエピソードであると思います。この後、イギリスはより所得再分配政策を強め、福祉国家へと進んでいったわけですが。

...そして日本では、バブル崩壊後の税制改革 - 所得税、住民税、相続税、贈与税の最高税率引き下げ - をはじめとして、トリクルダウン理論が勢いをもちはじめて久しい。そのなかで、下層の生活実態や排除(exclusion)、そして格差拡大、階層の固定化を論じる現代のブーズやラウントリーたちが次々と現れ、トリクルダウン理論に沿う政策のみでは政権が不安定化する - すなわち、選挙に勝てない - 雰囲気が生まれようとしている。

同書, p.18

先の参議院選挙の結果からすると、非常に示唆的な記述であると思います。

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