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2007年10月16日 (火)

「詭弁論理学」

詭弁論理学 (中公新書 (448))Book詭弁論理学 (中公新書 (448))

著者:野崎 昭弘
販売元:中央公論新社
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私がもっているのは、2005年52版(1976年初版)。ロングセラーの本のようです。内容は、詭弁のコレクションといったものではなく、詭弁を糸口にした論理学入門といった感の本ですね。特に後半部分がそんな感じになっています。

とはいえ、前半部分には、詭弁・強弁の分類がなされ、著者の経験した詭弁・強弁の例、古今東西の逸話からとった例などがあげられています。それがまあ、30年も前の話とは思えず、現代の話としても通用しそうなあたり、人間というのはあまり変わらないものだの感を強くします。

二分法とは

人々や考え方などを、ある原理的な基準でふたつに分けてしまう考え方を、二分法という。テレビっ子ならすべての人間を「ワルモノ」と「イイモノ(善人)」に分けるであろう(イギリスの子供は、昔の王さまの話がでるとすぐ、「それ、いい王様? 悪い王様?ときくという)。

同書, p.32

大人でも、短絡的に良し悪しを他人に聞こうとする人はいますね。

個人的に気に入った逸話は、以下のものです。「論点のすりかえ」の例として。

クールリッジは、学校側の証人ミセス・ケネディに、退学させられた少女のどこが悪かったのかとつめよった。するとケネディ夫人は、少女が「いちごを食べた」という例を挙げた。

クールリッジ「へえ、いちごを食べたのですか。どうしてそれが悪いのですか」

ケネディ夫人「禁じられておりました」

「しかし、いちごを食べるとどんな厄介なことが起こるのですか」

「どうか、りんごを食べるとどんな厄介なことが起こるか、きいて下さいませ。ご存知の通り厄介なことが起こっています」

同書, p.76

後半は論理パズルが取り上げられています。長いですが、一番印象に残ったものをひとつ、引用してみます。

仲の悪い四十人の貴族が、それぞれひとりづつの従者と暮らしていた。ところがこの従者どもが悪い奴で、主人に隠れてこそこそ悪いことをやっていた。どの貴族も、他の貴族の従者どもが悪者であることは知っていたが、お互いに仲が悪いので、それを教えてやろうとしなかった。ところが、自分の従者が悪事を働いているかどうかは、誰も知らなかった - 従者たちはずる賢くて、自分の主人にだけはバレないように、工夫していたのである。

この様子を見かねた王様は、ある日、この貴族たちを全員呼びあつめてこういった。

「諸君は、他人の従者のことはよく知っているのに、自分の従者のことを少しもわかっておらぬな。よいか、諸君の従者のうち、少なくともひとりは悪者じゃ。主人たるものは、自分の従者が悪者とわかったら、即刻その首をはねよ。この始末を誤ったものは、自分の首を失うことになろうぞよ」

貴族たちは青くなって、王様に猶予を乞うた。そしてこの日を第一日として、第四十日めまで考えることを許された。

さて、それぞれの家に帰った貴族たちは、次のように考えた。

「王様は嘘をつかない。実際、よその従者は性悪ばかりなのに、肝心のおのれの従者が悪者かどうか、おれにはさっぱりわからんからなあ。王様の話だと、他の奴らもおれと同様らしい。ということは、他のやつらにきけば、おれの従者のことはわかるはずだが、といって、きくくらいなら死んだほうがましだ。さて、どうしたものかなあ」

ところでこの国はたいへん文化程度が高いので、『中央新聞』という日刊新聞が刊行されていた(朝刊だけで、夕刊も号外もない)。土地のニュースは、猫のお産から馬の葬式までのっていた。貴族の家には毎朝無料で配達されるので、他の貴族がどうしたかと目を皿のようにして読むのだが、いたって平穏無事で、誰それが従者の首をはねたというような話はちっとものらない。従者たちは身の危険を感じていたっておとなしく、乗合馬車の中でも、足をなげだしたりしないで、荷物をきちんとひざの上におく、というほどであった。

こうして平穏無事な三十九日が過ぎた。第四十日めの朝の新聞にも特に変わったことはなく、ありふれた婚約記事や広告などで埋まっていた。 - 新聞を呼び終えた貴族は、静かに立ち上がり、従者を呼んで、首をはねた。こうして四十人の従者の首が、いっせいに飛んだ。

自分の従者が悪者だとわかったのは、なぜか?

同書, p.143

私がなぜこの問題を特に印象に残したか。

Joel Spolsky 氏によりますと。

私のささやかな経験から言わせてもらうと、伝統的に大学のコンピュータサイエンスのカリキュラムで教えられているもので、多くの人がうまく理解できないものが2つあった: ポインタと再帰だ。

Javaスクールの危険 - Joel on Software

中間試験の時になって、私は自分で思っているほど頭が良くないことに気付いた。私はいくつかの問題が全然できなかった。私はまだポインタを理解しておらず、再帰も理解していなかったためだ。

試してみよう - Joel on Software

この問題が、まさに再帰を使った問題だと思うからなのです(この問題を解くための推論方法には、もっと立派な名前がついていて、それは高校数学で皆が習うものではあるのですけど)。

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