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2008年3月26日 (水)

成功を重ねるほどハードルは高くなる

困ります、ファインマンさん (岩波現代文庫)Book困ります、ファインマンさん (岩波現代文庫)

著者:R.P. ファインマン
販売元:岩波書店
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ファインマン氏のスペース・シャトル チャレンジャー号爆発事故調査の報告書について、以前とりあげたのですが。

リチャード・ファインマンのエンジニアリング考

事故調査のいきさつは、『困ります、ファインマンさん』(大貫昌子 訳, 岩波現代文庫, 2001)で、日本語訳が読めます。例の”確率10万分の1”についても、ずいぶんと憤慨されている様子が描かれています。

「HPHTPパイプが破裂する確率は一〇のマイナス七乗」などと書いてあるが、そんなことが簡単に計算できるはずがあるものか! 一千万に一つなどという確率を概算するのは、ほとんど不可能に近いはずだ。エンジンの一つ 一つの部分につけた確率の数字は、あとで全部を足せば一〇万に一の確率になるように、はじめから細工してあるのは見えすいていた。

同書 p.264

この一編の”あとがき”の部分で、ファインマン氏が後に振り返っての感想がありまして。

NASAでなければできない計画があるといって議会を説得し、予算を獲得しなくてはならないし、そのためには少し大風呂敷を広げる必要が出てくる(少なくとも今度のシャトルの場合は、それが確かに必要だったようだ)。

同書 p.312

開発の初期には、大いなるチャレンジであったものが、成功を重ねるうちにいつしか当たり前のこととなり、目新しさに欠けるがゆえに、”売り込み”に苦慮するようになってしまうわけですね。その結果、幹部は外部に対し誇張した説明を行なうようになり、それに反する現場の技師の意見は省みられなくなる、”知らなかった””聞いていない”ということになる、という考察がなされています。

どんな仕事でも、成功を重ねるほどに、その仕事に求められる要求水準というのは、とめどなく上がっていくものですが。成功が当たり前とみなされるようになったとき、人々が考える水準と現実に現場の人間が知る水準との間には、大きな乖離が存在するのかもしれませんね。そう、およそ300倍以上もの。

「やっぱり技師連と管理側の間にはだいぶギャップがあるようですな。三〇〇倍以上のギャップがね。」

同書 p.263

こうしたことは、ある程度成熟した組織では、どこにでもみられる光景なのでしょう。

だから、僕はしばしば、高潔さと宮仕えとはどんな関係にあるのだろう? と考えずにはいられないのだ。

同書 p.263

難しいですね。企業に勤める身としては複雑なところです。

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