« 教育支出の費用効果分析 | トップページ | 思想・市場・暴力 »

2008年6月19日 (木)

エビデンスの無視

「死刑執行 ハイペース」と題する、日経新聞の記事に、町村信孝官房長官のコメントが掲載されています。

「近年凶悪な犯罪が多い、死刑判決が増えてきたということへの対応の一つの姿」とし、死刑執行が犯罪の抑止につながるとの見方を示した。

日本経済新聞 2008/6/18 43面(社会)

「死刑執行が犯罪の抑止につながるとの見方」は、官房長官のコメントからは直接導き出せませんので、この記事を書いた記者の見方である可能性はありますが。

2/1に警察庁が去年の犯罪統計を発表したんですが、殺人の認知件数は1,199件で平成3年の1,215件を下回って戦後最低を記録しました。

平成19年(2007)の殺人発生数は戦後最低 (少年犯罪データベースドア)

「凶悪な犯罪が多い」というのが、何を指すのか明らかではありませんが、殺人については、戦後一貫して減少、もしくは横ばい傾向であるようでして、統計上、「凶悪な犯罪が多い」という事実は存在しないようです。

また、刑罰の「重罰化」により、「犯罪の抑止につながる」という説も、エビデンスによって否定されています。学生時代に、「刑罰に犯罪予防の効果はなく、刑罰の存在は、もっぱら応報により説明される」というのを読んだ記憶があったのですが、最近の報道に接していると、記憶違いだったかと思えてきまして。改めて、調べてみましたが、少なくとも、「重罰化」によって犯罪抑止は期待できない、というのは事実であるようです。

2004年にナッシュビルで開催されたアメリカ犯罪学会では、学会長を中心とするグループによる刑罰による犯罪抑止効果の総合的検証プロジェクトの中間報告がなされていた。そこでは、40以上の抑止効果の実証研究をメタ分析を用いて検証していたが、重罰化には統計的に有意な犯罪抑止効果はなく、刑罰の確実性についても抑止効果は期待できないという結果が報告されていた。その際に、会場から「これだけのエビデンスがそろっているのに、どうして人は同じ過ち(重罰化)を繰り返し続けるのだろうか。」という質問が出された。

浜井浩一編著, 『犯罪統計入門』, 日本評論社(2006), p.34

確か、私が学生時代に読んだ犯罪学の本は、図書館にあった古い本で、1975年くらいに出版されたものであったと記憶しています。最近になって、違う研究結果が出された、というわけでもないようですね。

|

« 教育支出の費用効果分析 | トップページ | 思想・市場・暴力 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/80472/21727087

この記事へのトラックバック一覧です: エビデンスの無視:

« 教育支出の費用効果分析 | トップページ | 思想・市場・暴力 »