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2008年8月30日 (土)

「社内人件費単価」

SIer のソフトウエア受託開発での会計処理というのは、「請負工事の会計処理に準じて処理する」とされているわけですが。これは、プロジェクトごとに、直接材料費、直接労務費、直接経費、部門間接費、補助部門費を集計するというものです。社内エンジニアの人件費は、エンジニアのプロジェクト稼働時間によって、プロジェクトの直接労務費として計上することになっています。

実際、 SIer では、プロジェクトに番号を振って、エンジニアの稼働時間を把握しているはず。私の勤務先でも、自身の稼働時間とプロジェクトコードを報告しています。

直接労務費には、社内人件費、具体的には、給与、賞与、退職給付費用、法定福利費、福利厚生費などが考えられます。これらの社内人件費を各プロジェクトに直課するには、ソフトウエア開発を行う人員の稼動時間をプロジェクト別に集計し(稼動管理)、この稼働時間を基準として各プロジェクトの人件費を計算する必要があります。稼動時間単位当たりの人件費を算定する方法としては、人件費の実際原価を利用する方法と予定原価を利用する方法があります。

太陽ASG監査法人 編, 『ソフトウエアビジネスの会計実務』, 中央経済社, 2008, p.117

プロジェクトの「稼働時間単位あたりの社内人件費」、ということで、「社内人件費単価」という語を使うのは、別におかしくないのではないですかね。 SIer に勤務する者として違和感はありません。

一般的企業では、社内人件費は間接費として処理するものなのですかね。メーカーや小売業が、製品単位に社内人件費を原価として計上、というのは想像しずらいですし。

社内人件費が直接費になる、というのは、特殊な業界だけなのかもしれません。とはいっても、建設業、プラントエンジニアリング業など、請負工事を業としているところでは、同様にしているはずですが。

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2008年8月28日 (木)

ゆとり世代というより少子化世代

大学入学者の学力が低下している、という話について。

中央教育審議会 初等中等教育分科会(第59回)議事録・配付資料 [資料2-1] (文部科学省) のページに、「18歳人口及び高等教育機関への入学者数・進学率等の推移」という資料があります。それによりますと、平成19年度の収容力(当該年度の大学・短大入学者数 ÷ 当該年度の大学・短大志願者数)は、 90.5 % となっています。

グラフを見れば一目瞭然なのですが、第二次ベビーブーマー世代に当たると思われる、直近の18歳人口のピークを過ぎたあたりから、収容力がうなぎのぼりに上昇していますね。

Image1

18歳人口と大学入学者数を、直近のピークである、平成4年度から抜き出しますと、以下のとおりです。

年度 (1)18歳人口 万人 (2)大学入学者数 万人 (2) ÷ (1)
平成 4 205 54 26.3%
平成 5 198 55 27.8%
平成 6 186 56 30.1%
平成 7 177 57 32.2%
平成 8 173 58 33.5%
平成 9 168 59 35.1%
平成10 162 59 36.4%
平成11 155 59 38.1%
平成12 151 60 39.7%
平成13 151 60 39.7%
平成14 150 61 40.7%
平成15 146 60 41.1%
平成16 141 60 42.6%
平成17 137 60 43.8%
平成18 133 60 45.1%
平成19 130 61 46.9%

平成4年度の18歳人口から、平成19年度のそれをみますと、 63.4% まで減少しています。対して、大学入学者数は、むしろ若干増えていますね。この間に大学の定員が削減されたという事実はないかと思います。

さて、考察を簡単にするため、単純化して以下の仮定をおきます。

  • 上記の間、大学入学者集団の学力に変化はなかった
  • 上記の間、18歳人口は 6割に減った
  • 上記の間、大学の定員数に変化はなかった

そうしますと、まず1番手の大学については、上位 6割の層が、かっての大学入学者と同レベルの学力を有しており、下位 4割の層は、以前であれば、2番手の大学の上位 4割を占めていた層であると考えられます。

2番手の大学については、以前の 上位 4割の層は、ワンランク上の、1番手の大学へといき、以前の下位 6割の層が繰り上がって、上位 6割を占めます。下位 4割は、以前であれば、3番手の大学の上位 4割を占めていた層であると考えられます。

同様に、3番手、4番手 ... と続きます。

つまるところ、大学入学者全体の学力レベルは以前と同じであっても、個々の大学から見た場合には、明らかに入学者の学力レベルは低下しているというわけです。その原因はといえば、少子化の急速な進行にもかかわらず、大学の定員数を維持し続けたことでしょう。

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2008年8月27日 (水)

健保組合解散の是非

【Q】 このままいけば,健保組合がなくなってしまわないか?

【A】 なくなったとして,具体的に何が悪い?

健保組合が解散する (岩本康志のブログ)

全国に 4,000 以上もの健康保険組合が存在している、ということについて、問題とする声がないのはなぜなのでしょうかね。これを問題とする立場からすれば、健保解散・政管健保への移行は、むしろ「望ましい」ことなわけですけども。

厚生労働省 第15回医療経済実態調査の報告(平成17年6月実施) 保険者調査 より抜粋:

制度 政府管掌健康保険 組合管掌健康保険 船員保険 共済組合 国民健康保険 合計
市町村 組合
保険者数 1 1,584 1 76 2,531 166 2,697 4,359

健康保険組合を集約して、例えば、年金と同様に、「被用者」、「公務員」、「自営業その他」の3つにするとか、いっそ1つにまとめてしまえば、保険運営の効率は高まるでしょう。現在、保険間の財政調整に使われている拠出金も不要になりますね。

例えば、三重県では世帯の79%で負担が減少するとの試算もあり、一律に負担増になるとは言えないし、5倍とも言われていた市町村国保間の大きな格差は、広域連合にすることで逆に2倍程度まで縮まるとされる。

後期高齢者医療制度 冷静な議論を望む (おのざき耕平)

後期高齢者医療制度にしても、今まで市町村単位に運営されていた保険を、広域連合に集約することで、保険運営が効率化される、ということは前提とされているわけでして。

日経新聞などは、「医療の非効率」をさかんにいいつのっていますが、なぜか健康保険運営の非効率性について取り上げることはないですね。医療の効率化ということであれば、健康保険組合の統合が一番効果がありそうに思うのですがね。

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2008年8月19日 (火)

OOPL - 命令型 - 関数型 = ?

この分類をJavaが手近なので当てはめてみる。ServletやActionについてはモジュールだ。一見、ある特定Webアプリケーションに特化したように見えるが、ユーザーに対しては何もしないインフラのみのクラスにfeatureを加えているのは明らかだ。このタイプは実装継承が有効に働く。

では、型と言えるのは何だろう? ...... 思いつかない。

これが、犬猫OO解釈がだめになった理由ではないか? 少なくともJavaで構築するタイプのアプリケーションあるいはサービスにおいてのOOの利用はモジュールの側だからだ。

拡張と特殊化 (L'eclat des jours)

型といえる場合、というもので、私が典型的に思い浮かべるのは、「複素数型」ですかね。『プログラミング言語 C++』で例として取り上げられていたと思います。あるいは、 Ruby ですと、 Numeric 型を継承した Integer 型、 Float 型など。

OO の「クラス」を、ある種の代数的構造として使おうとする場合でしょうね。 C++ での、演算子オーバーロード、 friend 指定 など、こうした方向性を持っていたと思います。

関数型プログラミング言語 Haskell では、

  • 型: 値の集合
  • クラス: 型に対する関数の集合

と、かなり明確な形で、代数的構造を作るための機構が用意されているようです。

この場合、「値の集合」であるところの型というのは、「継承」されたりはしないわけでして、「継承」されるのは、「関数の集合」としての「クラス」だけですね。

こうした風に、 OO の「クラス」を使うというのは、やはり、中途半端な感があるわけでして、 OO 「ならでは」、という感じではないですよね。 OO の機能を使って、関数プログラミングの真似事をしているみたいです。

とすると、やはり、 OO 独自の特徴としましては、

  • オブジェクトが状態を持ち、メソッドの副作用でオブジェクトの状態が変わる
  • オブジェクトの状態を継承できる

といったあたりにあるのであろう、と思うわけでして。俗にいう、「実装の継承」というのは、ほぼ「状態の継承」を含んでいるのではないかと思いますね。

たしかに継承は便利機能に過ぎなくて,本来不要なものかもしれない。でも, 実際すごく便利なんだ。 C++ で継承を避けて合成・包含を優先するように設計を行っていくと,最終的に酷く面倒なことになるケースが多い。継承を避けるのはストイックで安全なやり方かもしれないけれど,なぜ楽にできることを楽にしないのだろうという,妙な矛盾と直面することになる。

継承を禁忌すること (Radium Software)

「悪しき習慣であるが、すごく便利だ」というのは、 OOPL のプログラミング言語としての位置付けを端的に言い表しているのではないでしょうか。論理的な明快さを優先するなら、関数型が勝るはずであるわけでして、 OOPL の存在意義というのは、まさにその悪しき便利機能にあるのではないですかね。

すぐに思い出せるだけでもWadlerとかXiとか、「オブジェクト指向は駄目」と言っている(のを私が聞いたことがある)プログラミング言語研究者は少なくありません。

オブジェクト指向と私 (sumiiの日記)

プログラミング言語のアカデメイアでは、 OOPL はあまり好まれてはいないそうで。

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2008年8月 1日 (金)

工学部の先生による教育問題の見方

学力低下は錯覚である Book 学力低下は錯覚である

著者:神永 正博
販売元:森北出版
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工学部の先生が、ゆとり教育、学力低下、理工系離れ、文系理系の待遇差について論じた本。出版元が森北出版なのも異色な感じですね。

この先生のお考えが、私が漠然と考えていたことと、ほぼ一致しているのが驚きでした。統計データを引きつつ、以下のような見解を示されています。

  • いわゆる「ゆとり教育の弊害」は、それを裏付ける証拠がない。
  • 「分数のできない大学生」など、大学生の学力が低下しているのは事実。しかし、少子化の進行にともない、18歳人口が急速に減少するなかで、大学の定員はむしろ増加しており、以前なら大学に入学できなかった層が入学していることで説明できる。
  • 「理工系」離れが言われているが、現実に起きているのは、「工学部離れ」であり、理系志望の人間自体は増えてもいないが、減ってもいない。理、医薬歯系へとシフトしている。

といったあたりは、文部科学省の統計データを眺めたりして、そういった傾向が見えないか、などと私も考えていました。

一方、

  • 文系の方が理工系より優遇されている、というが、データからみて、そのようなことはない。

というのは、少々意外な話でしたね。世間に流布する俗説というのはあてにならないものです。

この本の一番最後に、義務教育課程に対する提言がなされているのですが、この点に関しても全く同感です。国語・英語・数学の教科を徹底的にやるべき、とのご意見です。

筆者は、義務教育段階では、基礎教科を、時間をかけて徹底的に学ばせるべきだと思っている。学習には個人差があるので、なかなかわからない子もいるだろう。しかし、わからないからといってここで学び損ねると、後で取り返すのに大変な苦労をしなくてはならない。

【略】

なにがなんでも身につけてもらわなければならないからこそ義務教育なのである。

「詰込み教育」のアンチテーゼとしての「ゆとり教育」であれば、あれもこれもと広く浅くやるのではなく、基礎を徹底してやるのが本来の姿ではないか、と思うのですけどね。

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