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2008年10月 8日 (水)

工事完成基準でも同じです

工事進行基準では、ベンダの恣意的な売上計上がいくらでも可能である、といった話。

... そもそも工事進行基準は会計操作の余地がてんこ盛りの危ない会計処理方法だ。ITベンダーの事業実態を決算書に正確に反映するために、そうしたリスクを背負い込んだ。その分、他業種以上に堅牢な内部統制制度が要るし、会計士や監査法人のチェックも厳しくなると覚悟しなければならない。

工事進行基準の売上計上でSI料金を請求できますか (東葛人的視点 ITpro)

いくらなんでも、受注額を超える売上高を計上する、なんてことはないでしょう。すると、「会計操作」として現実に可能なのは売上計上の時点を「操作」することでしょうね。

極端な例を考えます。たとえば、契約締結の翌日が決算締め日で、その日に受注総額の半額に相当する売上高が計上されている、とかですかね。

工事完成基準で売上高を計上している場合でも、似たような例は考えられますよね。

たとえば、開発現場に契約書が営業から渡されて、みると納期が明日になっている、なんて話です。で、なぜか、一週間後に検収書が発行されて、顧客から入金がなされている...

工事完成基準というのは、システムが現実に完成した時点をもって売上を計上するわけでして、検収書発行時点でもなければ、顧客から入金があった時点でもないのですよね。書類上、システムが完成していることになっているだけではだめでして、現実にシステムが完成したといえる状況になければなりません。

企業会計原則では、売上高は、実現主義の原則に従うこととされており、通常、実現主義とは、(1)商品等の財またはサービスの提供、(2)その対価の獲得という2つの要件を満たしたときに収益を計上することとされています。

太陽ASG監査法人編, 『ソフトウエアビジネスの会計実務』, 中央経済社, 2008, p.133

実現主義の原則というそうです。

同書では、受注制作のソフトウエアに関しては、以下の3点の要件を満たしたときに、売上高を計上するのが適切である、としています。

(1) ソフトウエアの完成

 ソフトウエアの受注制作を請け負った企業における品質管理上のルールに合致したソフトウエアとして完成していることが確かめられていること。

(2) ソフトウエアの納品・検査

 完成したソフトウエアを顧客に納品し、顧客の検査を受けることによって実際に稼動し機能することが確かめられていること。

(3) ソフトウエア成果物の検収

 契約書によって顧客への引渡しが定められているソフトウエア成果物(例えば、設計書、仕様書、マニュアル、プログラムを記録したCD−ROM等)が引き渡され、その内容が顧客によって確かめられていること。

同書, P.136

日本公認会計士協会 が、平成17年に出した、「情報サービス産業における監査上の諸問題について」という報告書では、「収益の認識時点の問題」として、「我が国の会計基準では明確ではなく」とした上で、米国基準を紹介しています。この報告書が、前年のIT業界の一連の会計不祥事を受けて出されたものであることは周知のとおりと思います。

こうした流れからしますと、受託ソフトウエア開発に対する、工事進行基準の適用は、工事完成基準を厳格に適用することで、売上高を計上できない事態に陥る、ということに対し、逃げ道を用意した、とみることもできるのではないですかね。

工事進行基準ばかりがクローズアップされていますが、つまるところ、IT業界が会計処理を適切に行なうよう求められている、ということでしょう。この点、工事完成基準を使う場合でも同じことだと思います。

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