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2009年2月23日 (月)

基本設計と見積もり

基本設計というのは、費用・工期を見積もることができるレベルの設計といいます。 が、なぜか IT システムの世界では、基本設計の前に顧客に見積もりが提出され、「一括請負契約」が締結される、という不可思議なことが行なわれていたりします。「一括請負契約」が締結された後で、基本設計作業に入ることになるんですよね。

プラント・エンジニアリング業の方が書いた、プロジェクト・マネジメントの本を読むと、基本設計作業と並行して契約交渉が行なわれ、基本設計完了後、競争入札等で、契約が締結される、などと書かれています。基本設計の費用は、全部ベンダーの営業経費になるのかしら、と少し疑問に思っていたのですが、以下の話を読む限り、基本的にはそういうことみたいですね。

見積が無償なのは、むろん日本だけのことではない。しかし、私は海外で、ある欧米系石油メジャーに対する見積業務に従事していたときの経験を覚えている。案件は競争入札だった。大型プラントの見積作業は、それ自体が億の単位の費用を要する。ところで、その顧客は、応札者に対して、「入札要求仕様書(基本設計書)のベリフィケーション費用」という名目で、かなりの金額を支払う約束をした。

それだけではない。経済状況の乱変動に伴って、見積期間中に顧客の要求事項もあれこれと変化して、ついていくのがひどく大変な状況になった。すると、入札締切の直前に、顧客はベリフィケーション費用を50% 増額する、と宣言し、そのとおり実行したのだ。この時以来、見積はいつでも無料であるべしという感覚が、自分の中から抜け落ちてしまった。

お見積りは無料です (タイム・コンサルタントの日誌から)

IT システム業界の場合、売り手と買い手の同床異夢になっているように思います。

買い手は、「見積もりは無料」だと思っているし、売り手もそう思わせている。しかし、基本設計どころか、要求定義もろくにおこなってないわけですから、その見積もりは、極めて粗悪な代物です。

売り手としては、買い手から早く現金を引き出したいものですから、粗悪な見積もりでも、とにかく契約を結んでしまおうとするわけです。工期は短ければ、短いほど良い。今期の売上ノルマに追加できますからね。

買い手からみた場合は、おそらく、早くベンダーに責任を「丸投げ」してしまいたい、というのがあるのでしょう。見積もりが粗悪であろうがなんであろうが、「一括請負契約」である以上、ベンダーは「最後まで」責任を負うはず、ほぼ無限責任に近い責任が生じるはずだ、というところですかね。

これは、実のところ、買い手の幻想にすぎず、「請負」の対象が明確に定まらなければ、つまり、基本設計が完了していなければ、請負契約は法的に成立しないわけでして。契約を結んだと思っていても、法的には契約は成立していない、という奇妙な状態となります。

このような不安定な関係で、仕事が曲りなりにも成り立つのは、売り手と買い手との間に、一定の信頼関係がある場合だけなのでしょう。結局、長期の取引関係を前提に、ということになります。実際、「一見さん」との取引は、 9 割くらいの確率でトラブルに発展しているような感がありますね。

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