2007年3月13日 (火)

個人情報864万件が流出

日経新聞(2007/3/13付け朝刊1面および3面)によれば、「過去最大規模」だそうです。

大日本印刷(DNP)は3月12日、ダイレクトメール(DM)などの印刷物作成のために得意先から預かった個人情報863万7405件が流出していたことが判明したと発表した。

大日本印刷、DM作成のために預かった43社の個人情報864万件が流出 - CNET Japan

クレジット・カード番号も流出して、それが通販詐欺グループに使用され、警察の捜査で流出元が判明したみたいですね。

業務委託先の従業員が、MO・USBメモリなどの記憶媒体にデータをコピーして持ち出した、とのこと。日経新聞では、「”ひ孫請け”に当たる協力会社の元社員」となっています。

USBメモリにデータをコピーしてもち出す、というのは、実行は簡単ですが、防ぐのはなかなか難しいでしょうね。USBポートやPCのローカルディスク内のデータまで監視している企業ってあるんでしょうか。確か、PCのUSBポートを物理的に「封印」している企業はあったように思いましたけど。

セキュリティも突き詰めていくと、最後は信頼するしかないというところに行き着いてしまいます。

日経新聞では「監視カメラ」やら「操作記録」やらが取り上げられていますけど、個人的には、”ひ孫請け”の方が気になりますね。誰だか知らない人が、頻繁に出入りしているような、そんな職場を想像しました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年2月 2日 (金)

ソフトバンクモバイルの予想外な割引について

「携帯電話の通話料は得なんだか損なんだか分からない」というような話を、つい最近仲間内でしていたのですが。

相談が相次いでいるのは、携帯電話機の販売における、クレジット分割払いの契約(個品割賦あっせん契約)と「新スーパーボーナス特別割引」の割引サービスを組み合わせたプラン。2年間のローン契約と割引制度を組み合わせた契約方法で、契約料金無料で、端末代は24回の分割払いにした月々2670円だが、「新スーパーボーナス特別割引」による割引額月々2280円となり、最終的に毎月の支払額は390円に設定されている。

 ところが、自宅で電波がつながらなかったなどの理由で、この契約をした消費者が解約を申し出たところ、販売店側は「解約には応じるが、クレジット契約期間が終了する2年間毎月2670円を払い続けるか、端末の一括購入代金6万4080円を払わなければならない」と説明。

「解約で6万円請求--消費者生活センターがソフトバンクに改善要望書」,CNET Japan,Emi Kamino,2007/01/31 17:57

携帯電話の通話料って、何であんなに分かりにくいのですかねー。イニシャルコスト、ランニングコスト、ついでに解約時のコストを出す料金シュミレータを用意してくれても良さそうなものですが。ちなみに私は、通信業界ではありませんけど、料金シュミレータのプログラムを開発したことは、何度かあったりします。結構、他の業界では料金シュミレータを提供しているみたいなんですけどね。

先日、とある方に、「会社がつぶれるとき」という話を聞いた。曰く、「売上、利益の不振やキャッシュの不足等、会社がつぶれると言われる要因はたくさんあるが、本当はそんなことでは会社は潰れない。会社が潰れるのは、“ごまかし”をしたときだ。」ということだったのだが、なるほど例外はあるにしても、肝に銘ずべきお話だと思った。

「会社がつぶれるとき - テクノロジー解放日記」,ITmedia オルタナティブ・ブログ,小椋 一宏,2007年01月31日

私も結局のところ、商売の秘訣は誠実さ・正直さであるという、当たり前の結論に到達しています。”ごまかし”で瞬間的・短期的に儲けることはできても、長く続けることはできませんからね。「正直者が損をする」のは、対顧客の場面ではなく、対マネジメントの場面であるように思います。逆にマネジメントは、正直者が損をしないように行なわなければならないのでしょうね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年2月 1日 (木)

スケールの問題

拙ブログのエントリ「医療デスマーチの終焉」「新小児科医のつぶやき」 ブログで取り上げられ、医師の方々の予想外の共感を呼んだようです。取り上げてくださったYosyanさま、また読んで下さった皆様に、改めて御礼申し上げます。

さて、これに関連した以下のブログのエントリを読んで、思いついたことを少し。
(医療には関係がないかもしれません)

レジデント初期研修用資料: デスマーチなんだろうか?

書かれている内容は、私達がスケールの問題と呼んでいるものですかね。

  1. ある種のことは本当にうまくやるには才能が必要だ。
  2. 才能をスケールするのは困難である。
  3. 人々が才能をスケールしようとしてやるのは、才能ある者に作らせたルールに才能のない者を従わせる、ということだ。
  4. 結果として得られるものの品質はとても低い。

ITコンサルティングにおいてもまったく同じことが行われているのがお分かりいただけると思う。

ジョエル・スポルスキ,翻訳: 青木靖,「ビッグマック 対 裸のシェフ」,Joel on Software,2001/1/18

これは経営用語では、規模の経済と呼ばれるものになるのだと思います。

規模の経済 Economies of Scale

規模の経済とは、生産量の増大につれて平均費用が減少する結果、利益率が高まる傾向をいいます。同じ意味で、規模に関する収穫逓増、費用逓減といわれることもあります。

経営用語の基礎知識, NRI, 2004年10月

「才能」という程大袈裟でなくとも、ある程度の熟練を要する労働集約型産業では、スケール・メリットとして収穫逓増は可能でも、費用逓減には限界があるのではないのかな、と思います。つまり劇的なコストの抑制はもたらさない、ということです。これは、ITシステム業界が「オーダーメイドのシステム構築」で身をもって知ったことではないかと思います。

バブル崩壊後の「失われた15年」の間、ITシステム業界(に限りませんが)は、猛烈な価格低下圧力にさらされ続け、ダンピングを繰り返してきました。1年で価格・納期が半分になるくらいの感覚でしたね。結果、大量のデスマーチを生み出し、赤字プロジェクトが続出したわけですけど。

どうもデフレ下で国民の価格に対する感覚が麻痺してしまったのではないか、と疑っています。大量生産の工業品のようなものであれば、規模の利益によって原価を下げ、これを反映することで価格を下げることが可能なのですが、労働集約型産業においても、これと同じことを求めているように感じていました。しかし、産業の構造上不可能だと思います。劇的に価格を下げる場合は、質を落とす・リスクを増やす、といったことになります。

最近ですと建設業界にこれを感じています。公共事業の競争入札で、落札率9割台が「高止まり」と批判を受けて叩かれていますけど、もともと発注側がそんなに余裕をみて予算を積んでいるのか疑問なのですよね。逆に予定価格オーバーで落札者なし、という事例が報道からは出てこないのが不思議です。建設業も労働集約型産業で、人件費が一番大きいだろうと思いますし、そんなに劇的に価格が下がるはずはないように思うのです。落札率6割なんかは明らかに異常でしょう。

ちなみに、ITシステム業界では、一般競争入札を取り入れた結果、入札辞退、予定価格オーバーはもはや常識化した感じです。義理・人情よりも採算性重視になってますね。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年1月25日 (木)

医療デスマーチの終焉

医療クライシス:忍び寄る崩壊の足音/1 分べん台で1時間待ち

◇転送先探し、東京でも困難に

 全国で最も病院が多く、医師も集中する首都・東京のベッドタウン、東京都日野市。住宅街の一角に建つ日野市立病院(300床)の市原眞仁院長は、疲れた表情で話し始めた。

 「どこに頼んでも医師が見つからない」

 大学からの医師派遣を次々と打ち切られ、内科や小児科など5科で入院の受け入れ制限など診療を縮小している。4月には脳神経外科が縮小に追い込まれる見通しだ。
...
昨年7月。東京都内の女性(26)は休日の未明、かかりつけの産婦人科で陣痛を抑える点滴を受けていた。妊娠28週での早産が避けられず、新生児集中治療室(NICU)のある病院へ転送が必要になったためだ。

 東京にはNICUを持つ24病院が参加し、出産前後の「周産期」の情報を共有するネットワークがある。うち9病院が総合周産期母子医療センターに指定され、受け入れ先探しも担う。

 しかし、最も近いセンターの杏林大病院(東京都三鷹市、1153床)は「NICUがいっぱいで受けられない」。医師は転送先を探し、女性の横で電話をかけ続けたが、次々と断られた。

 女性は分べん台に乗せられたまま1時間が過ぎた。「医師不足は地方の話。東京は大丈夫」と思っていたが、電話をかける先がどんどん遠くなり不安が増す。「あたし、どうなるの」

MSN毎日インタラクティブ:毎日新聞 2007年1月23日 東京朝刊

ネット上での医師の方々のブログ・討論からは、一月に入ってから急速に医療崩壊が進み、相当深刻な状況にあることが察せられます。

医療崩壊について、以下に私自身の理解したところをまとめて置きたいと思います。

1. 人口あたりの医師数は、1970年以降、OECD平均を下回り続けており、格差は広がり続けていた。医師不足は30年以上前からであり、最近のことではない。特に国立・公立病院に勤務する医師(勤務医)は36時間連続勤務が日常的であるような過酷な労働環境にあった。

2. 1983年の「医療費亡国論」、つまり医療費の増大が国家財政に深刻な影響を及ぼす、という主張から、医療費は抑制され続けてきた。この結果、現在の医療費の対GDP比は先進国中最低レベルにまで落ち込んでいる。

3. 救急医療体制の整備、夜間診療の実施など、国民の要求に応え、医療の充実を図ってきた。しかし、24時間診療(医療のコンビニ化)のように、国民の要求は増える一方であった。

4. 国民が医療の不確実性を理解しなくなり、確実な治療を求めるようになった。これが期待を裏切られた結果としての、医療事故訴訟の増加となって現れた。また、警察に被害届を出す例も増え、懸命な治療の結果にも係わらず不幸な結果となった場合に、医師が逮捕されるという事態が起きた。

5. 以上のことから、医療従事者、特に医師のモチベーションが低下し続け、過酷な勤務に耐え切れなくなり、病院の医療現場を辞す例が続出している。

まとめてみますと、私達国民が医療に対し、予算・人員が極めて不足しているにもかかわらず、過大な要求をし続けた、ということです。

私と同業の方、プロジェクト・マネージャー、SE、プログラマの方々であれば、これがいわゆるデスマーチ・プロジェクトと酷似した構造であることに気づかれると思います。医療現場は少なくとも20年間はデスマーチを続けていたのでしょう。メンバーの大量退職が起きるのは末期に近いとみて良いと思います。

エドワード・ヨードン著「デスマーチ」(第2版, 日経BP社, 2006)では、聖書から以下の寓話が引かれています。

自分のラクダをどんな重い荷物でも運べると自慢していた農夫が、毎日少しずつ多く干し草を積んで町の市場に通っていたが、限界を超えて積んだ少しの藁で、ラクダが骨を折って死んでしまった。

医師の方々の関心は既に医療崩壊後に移っているようです。再建に必要なのは「要求のトリアージ」でしょうかね。

個人的には、現政権に対する世論の風向きが変わった可能性に一縷の望みを繋ぐことにします。まずは四月の統一地方選挙ですね。医療が争点にあがると良いのですが...

---

医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か Book 医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か

著者:小松 秀樹
販売元:朝日新聞社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

デスマーチ 第2版 ソフトウエア開発プロジェクトはなぜ混乱するのか Book デスマーチ 第2版 ソフトウエア開発プロジェクトはなぜ混乱するのか

著者:エドワード・ヨードン
販売元:日経BP社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (4) | トラックバック (8)

2007年1月22日 (月)

医療崩壊問題の紹介

[追記 2007/01/23]

<医師不足>公立病院の半数、診療縮小 毎日新聞調査
医師不足などのため、東京都と大阪府内の計54の公立病院のうち、公立忠岡病院(大阪府忠岡町、83床)が3月末に閉院するほか、半数近い26病院で計46診療科が診療の休止・縮小に追い込まれていることが、毎日新聞の調査で分かった。常勤医で定員を満たせない病院は45病院あり、不足する常勤医は計285人に上る。欠員を非常勤医で穴埋めできていない病院もあり、医師不足によって病院の診療に支障が出る「医療崩壊」が、地方だけでなく2大都市にも広がり始めている実情が浮かんだ。

Yahoo!ニュース - 毎日新聞, 最終更新:1月23日3時12分

---

日本の医療制度は国民皆保険制度の上に成り立っている。この制度は、全国民による相互扶助と、医師を含めた医療職の両輪がうまく働くことで成立しています。
それが今崩壊しようとしています。
国民は保険料を払わなくなっている(払えなくなっている)。そして医療職では、特に医師が逃散して、国民が医療を受けたくても医師がいなくなり病院がなくなってきています。さらに、国は混合診療解禁という正面からと低医療費政策という絡めてからと両面から、数十年、営々と築いてきたこの制度を壊そうとしている。

日本の医療が崩壊している ある町医者の診療日記

ヤブ医者ブログ: 日本の医療費の実態 で「ブログなどをお持ちで、日本の医療制度に関心のある方は、是非上記ページへのリンクをお願い致します。」とありましたので、紹介したいと思います。

なお、冒頭で紹介したページにあります、パワポのファイルは、無料のPowerPoint Viewer を使えば見ることができます。私も自宅PCにはパワポは入れてないので、ダウンロードしました。^^)

いままでのブログのエントリとはだいぶん毛色が違ってますが。まあ、個人ブログでございますので、深く考えないことにします。

なお、パワポのファイルが使われました、「小松秀樹先生・本田宏先生ご講演」を企画したのは、「内閣府認定NPO法人メディカルコンパス」という団体で、この団体が運営するHPにも、以下の記事がありましたので、紹介しておきます。

最近になり産婦人科医や小児科医が不足し重大な事態になっていることが報道されていますが、実際には産婦人科や小児科だけの問題ではなく日本中の大病院から勤務医が立ち去り始めており、医療全体が急速に崩壊しつつあることをご存知でしょうか。病院の立派な建物にはいつもと変わらず患者さんがあふれ、医師や看護師は今までと変わらない様子で働いていますが、日本の医療制度は現在いくつもの深刻な問題に直面しており、従来どおりの仕組みではもはや成り立たなくなってしまいました。日本の医療はタイタニック号のような状態です。今はまだ波が甲板を洗うような状態ではありませんが、やがて沈没することは避けられない状況です。政府は今後船をまったく別の形に作りかえることを計画しています。

オピニオン: 医療全体が崩壊の危機 

| | コメント (0) | トラックバック (0)